第3章 店舗が果たす役割の再定義

JASEC 日本イーコマース学会

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第3章 店舗が果たす役割の再定義

第3章 店舗が果たす役割の再定義

  • 4月14日
  • 読了時間: 6分

 OMOの議論が高まるにつれて、「店舗は死ぬ」というトーンから、「店舗は変わる」というトーンへと、小売業の認識は静かにシフトしている。ホームセンターとドラッグストアという生活密着型小売において、店舗はもはや「商品を並べて売る場所」ではない。店舗は、在庫だけでなく、情報・相談・体験・安心感を提供する、顧客接点の“核”へと変化している。OMOの設計が機能するかどうかは、最終的には、店舗がこの役割をどこまで具体的に担えるかにかかっている。

 本章では、マツモトキヨシやツルハホールディングスといったドラッグストア大手、そしてカインズやDCMホールディングスといったホームセンター大手の取り組みをもとに、店舗の役割がどのように再定義されているのかを整理する。



ドラッグストアの店舗:健康管理と日用品のワンストップ拠点

 ドラッグストアにおいて顕著なのは、「薬局機能」と「日用品・食品小売機能」が一体化している点である。マツキヨココカラ&カンパニーの統合報告書などでも、同社が医薬品・化粧品・日用品・食品を横断的に展開し、「美と健康」を軸とした生活支援型の店舗づくりを進めていることが示されている。調剤機能の導入や強化により、来店頻度や滞在時間が高まり、結果として関連商品の購買につながる構造が形成されている。

 処方せん受付をきっかけに来店した顧客が、健康食品やサプリメント、衛生用品などを併せて購入する行動は、業界全体でも一般的に見られる傾向である。こうした購買行動は、店舗が単なる「薬の受け取り場所」ではなく、「健康と生活を支える拠点」として機能していることを示している。店舗スタッフの役割も、薬の説明にとどまらず、生活習慣や健康維持に関する提案へと広がっている。

 ツルハホールディングスも同様に、調剤機能と物販機能を組み合わせた店舗運営を強化している。同社は公式資料の中で、処方せん受付やお薬手帳アプリ、予約機能などを通じて、顧客の利便性向上と来店機会の創出を図っている。調剤と物販を組み合わせることで、店舗は「健康管理と日常購買を一体化する場」としての役割を担うようになっている。

 さらに、売場設計の観点でも変化が見られる。調剤コーナーと日用品・食品売場を近接させることで、処方薬受取後の自然な購買導線を形成し、生活関連商品の追加購入を促す設計が進められている。こうした取り組みにより、店舗は「健康管理と生活支援を統合したワンストップ拠点」としての機能を強めている。



ホームセンターの店舗:相談・体験・実物確認の拠点

 一方、ホームセンターにおいては、店舗の役割が「在庫を保管する場所」から「相談・体験・実物確認の場」へと変化している。カインズでは、オンラインで商品情報を調べた上で来店する顧客を前提に、店舗での体験価値を高める取り組みが進められている。

 同社は、DIYに関する相談カウンターの設置や、実物展示を通じた売場づくりを強化している。棚や収納用品、工具などについて、実際の使用例や組み立て例を提示することで、顧客が「自分で使えるかどうか」をその場で判断できる環境を整えている。こうした取り組みにより、店舗は単なる販売の場ではなく、「相談と意思決定を支援する場」としての役割を担っている。

 また、DCMホールディングスも、店舗における専門性の強化を進めている。同社の統合報告書では、リアル店舗とデジタルの融合を通じて、顧客の課題解決を支援する方針が示されている。店内では、建材や外構、園芸などの分野ごとに専門性を持った売場を構築し、スタッフが具体的な利用シーンや施工方法について提案を行う体制を整えている。

 このような取り組みにより、ホームセンターの店舗は「商品を置く場所」から、「課題解決のために相談し、体験し、確認する場所」へと変化している。特にDIYやリフォームの分野では、商品の仕様理解や組み合わせが重要であるため、店舗での対話や実物確認が購買に大きく影響する。



店舗の役割変化の背景

 店舗の役割が再定義されている背景には、顧客の購買行動の変化がある。現在では、多くの生活者がオンラインで情報収集を行い、価格や在庫を確認した上で店舗を訪れる。この流れの中で、店舗には「情報の補完」だけでなく、「判断の支援」や「不安の解消」といった役割が求められるようになっている。

 ドラッグストアでは、健康や生活に関する不安を解消するための情報提供が重要であり、調剤機能やデジタルサービスと連携した店舗運営が進んでいる。一方、ホームセンターでは、DIYやリフォーム、防災といった課題解決のための情報や体験が求められ、店舗は相談や体験の場として機能している。

いずれの場合も、オンラインだけでは完結しない領域を店舗が担うことで、OMO全体の価値が成立している。



まとめ

 OMO時代における店舗は、もはや単なる販売拠点ではない。ドラッグストアでは、店舗は「健康管理と日用品を統合したワンストップ拠点」へと進化している。ホームセンターでは、店舗は「相談・体験・実物確認を担う課題解決拠点」へと変化している。

 共通しているのは、店舗が在庫の置き場ではなく、情報・相談・体験を提供する“サービスの場”へと変化している点である。OMOは、この店舗の役割変化を前提として初めて成立する。

次章では、「ECは売上ではなく来店導線をつくる」という視点から、OMO設計の具体像をさらに掘り下げていく。



参考文献

■ ドラッグストア:店舗機能・戦略

マツキヨココカラ&カンパニー統合報告書(Integrated Report)https://www.matsukiyococokara.com/sustainability/integrated_report/pdf/MC%26C_integrated_report_2025.pdf

※「美と健康」を軸とした商品構成、調剤・物販の融合、顧客体験設計について言及

※店舗戦略・デジタル施策の全体方針

ツルハホールディングス統合報告書・IR資料https://www.tsuruha-hd.com/ir/

※調剤併設型店舗、顧客接点強化、デジタル活用戦略

※アプリ・処方せん受付・顧客接点設計

■ ホームセンター:店舗機能・OMO・体験強化

カインズ公式リリース(アプリ・店舗機能)https://www.cainz.co.jp/news/4150/

※在庫検索、店舗受取、売場案内などOMO関連機能

※DIY提案、店舗体験設計、サービス強化

DCMホールディングス統合報告書(Integrated Report 2024)https://www.dcm-hldgs.co.jp/grp/pdf/grp/ir/ir-library/integrated-report/2024_view.pdf

※「店舗+デジタル融合」、BOPIS、顧客課題解決型店舗への転換

IR情報https://www.dcm-hldgs.co.jp/ir/

※店舗戦略・中期経営方針

■ 業界構造・店舗役割の背景

日本DIY・ホームセンター協会業界概要https://www.diy.or.jp/i-information/association/jigyo/

※ホームセンターの役割(DIY・生活支援・体験価値)

日本チェーンドラッグストア協会業界統計https://www.jacds.gr.jp/

※ドラッグストアの業態定義・生活インフラとしての位置付け

■ 店舗進化・小売DXの文脈

経済産業省商業・流通政策関連資料https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/index.html

※小売のデジタル化・店舗役割変化の政策背景

■ 補足(店舗の役割変化・小売トレンド)

ダイヤモンド・チェーンストア(流通専門誌)https://diamond-rm.net/

※小売店舗の役割変化(体験・提案型店舗などの実務事例)

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