第1章 OMOとは何か、なぜ今ホームセンターとドラッグストアなのか

JASEC 日本イーコマース学会

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第1章 OMOとは何か、なぜ今ホームセンターとドラッグストアなのか

第1章 OMOとは何か、なぜ今ホームセンターとドラッグストアなのか

  • 4月14日
  • 読了時間: 7分

 OMO(Online Merges with Offline)という言葉は、もはや語彙集の一角に定着しているが、実際には「ECサイトを強化する施策」や「店舗アプリの導入」など、チャネル単位の施策と混同して語られがちだ。本質は、オンラインとオフラインを分けたうえで「どちらで売ればいいか」を考えるのではなく、顧客が情報を集め、比較し、購入し、受け取り、再購入するまでの一連の流れを、一つの顧客体験として設計することにある。つまりOMOは、単なる“チャネル統合”ではなく、“体験の設計”である。

 この発想は、特にホームセンターとドラッグストアという生活密着型小売で、その効果が顕著に表れている。いずれも生活の「困りごと」や「小さな不安」を直接支える業態であり、オンラインと店舗の境目が曖昧になる流れが、顧客にとって自然に感じられる。たとえば、カインズやコーナン、ツルハドラッグやマツモトキヨシといった大手チェーンが、それぞれの特性に応じたOMO設計を進めている中で、ホームセンターとドラッグストアの違いと共通点が、より鮮明に見えてくる。



OMOの本質:「チャネル」ではなく「体験」を設計する

 OMOが注目される背景には、2020年代以降の生活者行動の変化がある。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によれば、2024年の日本のBtoC-EC市場規模は26.1兆円(前年比約5.1%増)に達し、EC化率は9.8%となっている。生活者の多くが、購買前にオンラインで情報収集を行う行動は一般化しており、検索、レビュー確認、価格比較、在庫確認といったプロセスを経たうえで、最終的な購買行動に至る。この過程において、オンラインと店舗が連続的に接続される構造が生まれている。

 この動きに対応した代表例の一つが、ドラッグストア大手のマツモトキヨシである。同社の公式アプリは、ポイント管理やクーポン配信、商品検索、在庫確認などの機能を統合し、来店前後の行動を支援する役割を担っている。特に、日用品や医薬品のような継続購買商品においては、購買履歴やリマインド機能を通じて、再購入を促す仕組みが整備されている。こうした設計により、生活者は「必要なときに思い出して買う」から「自然なタイミングで継続購入する」へと行動が変化する。

 一方、ホームセンター大手のカインズも、OMOを前提とした取り組みを進めている。同社のオンラインストアでは、店舗在庫の確認機能や店舗受取サービスが整備されており、オンラインで情報収集を行った顧客が、店舗で実物を確認・購入する流れを支えている。特にDIY用品や大型商品では、「オンラインで比較し、店舗で最終判断する」という購買行動が一般的であり、オンラインと店舗の役割分担が明確に機能している。



ホームセンターとドラッグストアの共通点と違い

 ホームセンターとドラッグストアには、「生活密着型小売」という共通の性格がある。ドラッグストア業界は市場規模が約8兆円規模に達し、店舗数も1万店を超えるなど、生活インフラとしての役割を担っている。一方、ホームセンター業界も約4兆円規模の市場を形成しており、住まいや生活環境を支える重要な業態である。いずれも生活者の身近な場所に存在し、定期的に利用される点が共通している。

 一方で、購買行動には明確な違いがある。ホームセンターでは「目的買い」の比率が高く、DIYや修繕、防災対策といった具体的な課題解決を目的とした来店が中心となる。これに対し、ドラッグストアは日用品や消耗品の購入を中心に、高頻度での来店が特徴である。この違いは、オンラインと店舗の接点設計にも影響を与える。

 たとえば、ホームセンターでは、オンラインでの事前情報収集が購買に大きく影響する。DCMホールディングスなどは、オンライン上での商品情報提供や在庫確認機能を強化し、来店前の検討プロセスを支援している。一方、ドラッグストアでは、アプリを通じたクーポン配信やポイント施策が来店頻度の維持・向上に寄与しており、オンラインは来店促進の役割を強く担っている。



なぜホームセンターとドラッグストアがOMOに相性がいいのか

 ホームセンターとドラッグストアがOMOの設計に適している理由は、大きく三点に整理できる。


 第一に、生活上の課題や不安が明確である点である。ホームセンターではDIYや修繕に関する情報、ドラッグストアでは健康や衛生に関する情報が求められ、オンラインでの情報提供と店舗での実物確認が自然に連携する。

 第二に、商品ラインナップと価格帯の幅広さである。両業態とも、低価格帯から高価格帯まで多様な商品を扱うため、価格比較や仕様確認といったオンラインでの情報収集の重要性が高い。

 第三に、店舗ネットワークの広さである。多くの生活者が日常的にアクセス可能な距離に店舗が存在するため、オンラインでの情報収集がそのまま来店行動につながりやすい構造となっている。



事例①:ツルハHDの「アプリ×店舗」連携

 ツルハホールディングスは、公式アプリを通じて、ポイント管理、クーポン配信、在庫確認、処方せん受付などの機能を統合し、来店前後の顧客体験を一体化している。特に調剤機能との連携により、来店前の予約や待ち時間短縮といった利便性を高めており、店舗利用のハードルを下げる役割を果たしている。アプリは単なる販促ツールではなく、店舗利用を前提とした顧客体験の基盤として機能している。



事例②:カインズの「オンライン在庫照会×店舗受取」モデル

 カインズでは、オンラインでの商品検索・在庫確認と、店舗受取サービスを組み合わせることで、来店前の意思決定を支援している。特に大型商品や専門性の高い商品では、オンラインで仕様を確認し、店舗で実物を確認・購入するという流れが定着している。店舗では、スタッフによる補足説明や提案が行われ、オンラインでは得られない付加価値が提供されている。



事例③:DCMホールディングスの「在庫照会×来店導線」戦略

 DCMホールディングスは、オンライン上での商品情報や在庫情報の提供を強化し、来店前の検討プロセスを支援している。これにより、顧客は事前に必要な情報を把握したうえで来店し、店舗では具体的な相談や最終確認を行うことができる。オンラインと店舗の役割分担を明確にすることで、効率的な購買体験が実現されている。



まとめ:ホームセンターとドラッグストアのOMOの共通点

 ホームセンターとドラッグストアは、OMOの設計において高い親和性を持つ業態である。両者はいずれも生活者の課題解決に直結する商品・サービスを提供しており、オンラインで情報を収集し、店舗で実物を確認するという行動が自然に成立する。OMOはこの一連の流れを前提に設計されるべきものであり、単なるチャネル統合ではなく、顧客体験全体の最適化として捉える必要がある。

 これから続く章では、ホームセンターとドラッグストアのOMO戦略を、さらに具体的に検討していく。第2章では、両業態の共通点と違いを整理し、OMOの設計に役立てる。




参考文献

■ 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」

経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tyoukei/result-2.html

※BtoC-EC市場規模(2024年:26.1兆円)、EC化率(9.8%)などの基礎データ

■ ドラッグストア業界関連

マツキヨココカラ&カンパニー統合報告書・IR資料https://www.matsukiyococokara.com/ir/

※アプリ活用、顧客接点強化、OMO的施策の方向性

ツルハホールディングスIR情報・決算説明資料https://www.tsuruha-hd.com/ir/

※アプリ・調剤連携・顧客データ活用の取り組み

一般社団法人 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)https://www.jacds.gr.jp/

※ドラッグストア業界の市場規模(約8兆円規模)・店舗数データ

■ ホームセンター業界関連

カインズ公式サイト・ニュースリリースhttps://www.cainz.co.jp/

※EC・店舗連携、在庫検索、店舗受取サービスなどの施策

DCMホールディングスIR情報・決算説明資料https://www.dcm-hldgs.co.jp/ir/

※オンライン強化、店舗連携、来店導線設計

一般社団法人 日本DIY・ホームセンター協会https://www.diy.or.jp/

※ホームセンター業界の市場規模(約4兆円規模)、店舗数など

■ 生活者行動・統計データ

※消費行動・購買行動の基礎データ

内閣府地域経済・商業関連資料https://www.cao.go.jp/

※生活圏・店舗アクセスなどの背景データ

■ OMO・DX関連の補足資料

トランスコスモスEC・DXレポートhttps://www.trans-cosmos.co.jp/knowledge/ecx/

※OMO・EC・顧客体験統合に関する解説・事例

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